« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

2008年7月

公判調書が裁判員になくて困ること

東京弁護士会発行のLIBRA5月(2008年5月1日発行)の14ページと15ページに,公判調書がなくて困ることがいろいろ載っていました。
下の特集記事の中の5の座談会のところです。

特集
裁判員裁判 ―もう, 待ったなしの段階へ―

1 裁判員裁判1年後に迫る  冨田 秀実
2 裁判員裁判の仕組み  山内 雅哉
3 裁判員裁判における公判前整理手続  坂本 正幸
4 裁判員裁判の公判における弁護活動の留意点  榊原 一久
5 座談会「模擬裁判員裁判を検証する」  西尾 則雄
6 裁判員に向けての説明義務について  吉田 秀康
7 もう裁判員裁判は怖くない  遠藤常二郎
8 日弁連研修に参加して  坂根 真也

リンク: 会報「LIBRA」 | 出版物のご案内 | お知らせ | 東京弁護士会(法律相談・弁護士相談等).

関係がある発言を拾ってみました。

・公判調書が評議には間に合わず,文字で出ていないから,乙号証を基準に評議されては正直いって怖いな,と思いました。

・乙号証が書面として各裁判員の手元にあっていつでも見られる,これに対してDVDは簡単に見られない,という状況で評議を進められると厳しいですね。

・公判で被告人が供述して,しっかりこちらの方の言い分を述べたのに,自分の不利益な内容が記載された被告人調書が書面として残っていて,それが裁判員の手元に配布されるという。それ自体がやはりおかしいな。

・検事がいきなり法廷で写真を撮っていいか,再現させてくれって。裁判長が公判調書の添付資料とすることで許可しました。そしてその写真を見ながら評議している。公判調書の資料として提出するようなものじゃないんです。公判調書は出来上がっていないんだから。あれはもう今後絶対に認めさせるべきじゃないと思うんですね。

・裁判所は,尋問事項書を出してくれと言ってきているようですね。
それで裁判所は,少し行間を空けて,裁判員がメモを書けるようにして欲しい,と言っていました。

(感想)

速記官の目からは,裁判員をはじめ、皆がメモ書きに追われることばかりが気になっていました。

それだけでなく,評議の基準とされるべき公判調書が、まず裁判員にしっかり手渡されなければ、ほかの証拠や,法廷での写真撮影などの関係でも,様々に問題が起こってくるのではないかと感じました。

裁判所速記官を活用すれば、評議に間に合うように公判調書を作成できるので、是非使ってほしいです。

音声認識システムによる文字データを当日中に提供?

2008年7月発行の日弁連新聞414号に、次のような記事が載っています。

最近の新聞報道や、最高裁が職員にしている説明と違っていて、首をかしげることばかりです。

裁判員音声認識システム

「文字列から画面検索」

 裁判員裁判の評議においては,法廷の証言の確認が必要になる場合が予想される。その際に証言を録画したDVDから,すばやく必要な場面を検索するためのツールとして,最高裁は音声認識システムの開発を続けていた。

この度,試作品の完成をみたことから,5月末から東京地裁の一部法廷でこのシステム利用が試行されている。
 このシステムは,録画された証言につき,証人等の発言内容を文字化して別ウインドウで逐次表示するものである。後で,例えば「実況見分」という文字列を検索すると,その言葉が発言されている場面(複数場面)が検索できるシステムとなっている。裁判員はこのシステムを用いる。文字化の精度は9割程度であるが,目的の場面を素早く探すためには十分の水準である。弁護人にも尋問のあった当日中に,音声データと文字データの提供等がなされる予定である。

この記事によると、文字化の精度は9割となっていますが、最近の新聞報道では「8割の認識率をめざす」という表現でした。

弁護人に、尋問のあった当日中に、文字データの提供がされることも初耳です。

また、発言内容を文字化して別ウインドウで逐次表示というのも、裁判員の目の前に表示されたり、検索も裁判員自身でできるかのように誤解する人もいるかもしれないです。

最高裁から弁護士への説明が足りてないように感じます。

もっとも、5年ぐらい前のIBMの音声認識システムのときの最高裁の説明ビデオでは、精度が95%で、裁判用語を足せばすぐ実用化できるとか、調書も作ると説明していたので、その説明がまだ弁護士さんの中で信じられたままになっているのかもしれません。

最高裁は、裁判員裁判の公判記録がどうなるかについて、もう少しきちんと弁護士さんたちに説明したほうがよいと思います。

音声認識システム、検索・再生だけにあと何億?

6月23日、最高裁の総務局+情報政策課,人事局,経理局が、裁判所職員の労働組合である全司法との交渉で説明した内容です。

【音声認識システム】
音声認識システムの研究開発の状況については,先日,職員管理官から説明したとおりである。今後も,職員及び職員団体に対しては,必要に応じて説明していきたいと考えている。
 音声認識システムについてはシステムにより得られた文字データを映像・音声データとリンクさせ,文字データをいわばインデックスとして利用することによって,証言等の中から評議での確認に必要な部分を検索し,速やかに映像及び音声で再現することを念頭に置いて,映像関連機能として盛り込むことを前提としてシステム構築を行ってきたことは,先日,職員管理官から説明したとおりである。
 システムで得られた認識結果(文字データ)を利用して検索する場合,通常はキーワードの多くがきちんと認識されている上,検索方法としては,このほかに,発言がされた時間を入力して検索する方法(その場合は,何時何分から前後何分間と範囲を指定することも可能である。)や発言者を特定して検索する方法も可能としており(これらのクロス検索も可能である。),検索に支障はないと考えている。今後とも,現場の意見等をふまえながら実際の運用に支障がないようなシステムを構築していくとともに,できるだけ高い認識率を実現することを目標に,引き続き研究開発を行いたいと考えている。

 
あと、最高裁と全司法本部とのやりとりで、組合側は、「音声認識システムについては,調書への活用も期待していたが,評議におけるインデックスとしての機能にとどまっている。さらなる認識率の向上を求める。また,プロトタイプを東京だけでなく多くの庁に設置してもらいたい。」と要望しました。

それに対して最高裁は、「平成21年の開始時にできるだけ高い認識率となるよう研究開発をすすめている。プロトタイプの設置は,今回は業者が立ち会ったり,作業を行う際の都合により東京以外では考えていない。東京地裁で行っているテスト結果をCD-ROMに記録し,配布する予定なので,それを見てもらって,意見があれば出してもらいたい。なお,最終検証として,12月には幾つかの庁でテスト運用を行うことを検討しているので,規模がどのくらいになるのかは分からないが,要望は承ることとしたい。」と回答しました

評議のときに、裁判員が、あのときどう言っていたかをもう一度確認したいという、検索システムだけのものに、約5年と4億の費用を掛けてきたことになります。

それすらも、これから12月になってやっと幾つかの庁でテスト運用してというぎりぎりの日程で、全国の様々な方言が飛び交う法廷で実際に使い物になるかどうかは、まだ未定です。

最高裁は、最初に調書を音声認識システムで作成すると言っていたのだから、潔く失敗を認めて、路線変更をすべきです。

これ以上、認識率の向上を求めても、全国の方言に対応している音声認識システムなどどこでも開発されていませんし、法廷の様々な人がしゃべる生の言葉のやりとりを直接認識させる方法で、高い認識率など幾らお金を掛けてもできるはずがありません。

最高裁に、高い認識率を求めることは、無駄にもう何億円もつぎ込むことと、貴重な時間の浪費になります。

最高裁が失敗を認め、路線変更して、裁判所速記官の裁判員への活用を決めてくれれば、検索・再生システムはもちろん、公判調書も提供できるし、視聴覚障害者に逐語の文字通訳も提供できるのにと残念です。

情報保障は業務じゃないので、速記官はだめ?

先日書いたブログ記事「裁判員制 障害者に意欲、不安 手話通訳不足など深刻」に、ミニフォーラムに参加された中途失聴者の方がコメントを寄せてくださいましたが、その中にこのような気になる内容がありました。

中途失聴者の私は裁判員のミニフォーラムに出席し、裁判所側の依頼した手書き要約筆記だったのですが、一応ミニ模擬評議にも参加できました。要約筆記の方は優秀だったと思います。しかしやはり要約なので、裁判速記官にお願いしたいと事前に言ってあったのですが、情報保障は業務じゃないということらしいです。裁判官が何人か説明役として出席していましたが、これは業務なのかな。

業務じゃないという理由で、速記官に声が掛からなかったことはとても残念です。

コメント本文はこちらです→http://kimi-koni.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/chunichi_web_c4f8.html#comments

過去に聴覚障害者が当事者や証人の事件で、速記官が法廷で文字通訳をした事例は何例もあります。

これまで最高裁は、速記官に不当にいろんなことを禁止してきたという経緯がありますが、また情報保障も禁止されそうで心配です。

過去には、速記官だけ私物パソコンの持ち込みに許可申請が必要だったり、ステンチュラの法廷持ち込み禁止や、速記官の二人立会いの禁止などもありました。

最高裁は、音声認識システムに、既に4億円も掛けていますが、今年から更に何億も掛けて、機材を設置したり、改良の費用をつぎ込んだりしても、法廷の記録にも情報保障にも、すぐ使えるものではないことはもう分かっているはずです。

手話通訳や要約筆記についても、手配の困難さや、正確に手話通訳されたかの担保のしかたや、要約でよいかどうかなどの問題があるので、速記官による情報保障を可能なように整備しておいたほうがいいように思います。

過去の不当な禁止は、速記官が長年たたかって、最高裁の許可をやっと勝ち取ってきましたが、情報保障についてもまたたたかう必要があるのでしょうか。

ハンデを負って不安な気持ちで裁判員として参加しようとしている障害者の方にかかわる問題なので、また不当に禁止などしてきて、問題解決に何年もかかるということのないように、最高裁に切に願いたいです。

諫早湾干拓事業訴訟:排水門開門の地裁判決 「早く元の海に戻して」 /佐賀 - 毎日jp(毎日新聞)

リンク: 諫早湾干拓事業訴訟:排水門開門の地裁判決 「早く元の海に戻して」 /佐賀 - 毎日jp(毎日新聞).

一見、速記官制度とは、何のかかわりもないように見える諫早湾なのですが、速記官の養成が停止されたのと、潮受け堤防閉め切りの時期が、1997年4月からで一緒です。

漁民や市民が反対する中、諫早湾でギロチンのような水門締め切り行為が強行された光景を見ると、各界の反対の中で最高裁が強行した速記官の養成停止と重なります。

この11年間、「開門」と「再開」で、お互いに上に向かって開け、開けと言ってきました。

環境問題が日々大きくなっていく中、時代の要請で、諫早湾は開門して調査する方向に向かっており、今回の判決もその現れのように思います。

一方、速記官制度問題も、裁判員制度の実施が迫ってきており、これまでの調書裁判から法廷重視のやり方への転換や、連日的開廷、視聴覚障害者が裁判員に選任されたときの情報保障の問題、法廷のIT化、音声認識システムによる調書作成は失敗など、時代の要請は、リアルタイム速記システム「はやとくん」を、ますます必要としているように思います。

この11年間、速記官、全司法労働組合、日本弁護士連合会、国会の法務委員会で議員さんたちから、何度も速記官の養成再開のお願いと、「はやとくん」の調査をお願いをしてきましたが、最高裁は頑固な態度を続けてきました。

最初の養成停止理由「速記タイプの製造継続が困難」が破綻しても、「はやとくん」がどんなに高性能になっても、98パーセントの速記官が「はやとくん」を使用しているという状態になっても、最高裁は「速記官の養成停止の撤回はあり得ない。」と言って、「はやとくん」を見ることさえずっと拒否しています。

これから、連日的法廷で速記録がほしいという声や、視聴覚障害者が裁判員で参加するための情報保障に速記を付けてほしいという声の高まりが予想されますが、それでも最高裁は無視の態度が続けられるでしょうか。

ともかく、法廷には時期尚早な音声認識システムを導入して何億円もつぎ込むことは、諫早湾の干拓地に入植を進める姿となぜか重なります。

やっぱりリアルタイム速記システムの導入をとなったときに、既に何億円も掛けて導入した音声認識システムが無駄になるとか言われそうで、ちょっと怖いです。

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

最近のトラックバック

2020年5月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31