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日弁連の速記官養成の再開を求める要望書(2001年1月)

今から7年前、日弁連が、最高裁長官と司法制度改革審議会あてに速記官養成再開の要望書を提出しました。

司法制度改革の論議が始まり、日弁連はいち早く速記官の必要性が増すことを予測していました。

速記官のことは、司法審や国会法務委員会でも繰り返し問題にされましたが、最高裁は、養成再開の要望にはこたえず、音声認識システムで対応できるとずっと説明してきました。

音声認識システムは、間に合っても検索システムだけで、調書作成と、聴覚障害者の裁判参加に使うことはおきざりにされようとしています。

以下、要望書です。

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                         日弁連総第54号
                       2001年1月17日
最高裁判所
 長官 山 口  繁 殿
                    日本弁護士連合会
                     会 長  久保井 一 匡

           速記官養成の再開を求める要望書

              要望の趣旨
 当連合会は、最高裁判所に対し、かねてより最高裁判所の速記官の新規養成の停止について反対してきたが、改めて速記官の養成を速やかに再開されるよう要望する。

              要望の理由

第一 最高裁判所の方針
 最高裁判所は、平成9年2月、速記官制度について、民間委託による録音反訳方式の導入により速記官の養成を平成10年4月以降停止すると表明した。逐語録需要に的確に対応し、更に逐語録作成の拡充を図っていくためには、客観的状況に照らすと速記官による機械速記方式に代えて録音反訳方式を導入するのが適当であると判断したためである。記録反訳という逐語録作成の代替方式がある一方、速記タイプの製造困難、人材確保の困難等速記官制の基盤が将来的に極めて不安定な状況の中で特殊技能習得のため厳しい訓練を行う速記官の養成を続けることは適当でないと決定した。

第二 当連合会の見解
 これに対し当連合会は、平成9年2月、速記官の作成する速記録は、弁獲士をはじめ訴訟を利用する当事者から高く評価されているものであるとして、速記官の新規養成を停止することに反対した。そして、当事者に信頼される調書作成体制の確保という観点からみると、なお逐語録作成システムの幹として速記官制度を位置づけてその養成を継続し、外部委託の録音反訳による調書作成方式は補充的措置とすべきであるとし、これは国民の期待に応える司法、特に裁判の適正、さらには裁判所の調書作成等に対する信頼性等に関するものであり、裁判所単独あるいは法曹関係者内部の協議だけで決せられるべき問題ではない、広く国民的な議論の中で決せられる問題であると指摘した。しかし、最高裁判所は前記方針通り、平成10年4月以降速記官の新規養成を停止した。

第三 司法制度改革審議会の中間報告
 昨年7月、内閣の下に設置された司法制度改革審議会は、中間報告で、国民の司法参加について、21世紀の我が国社会においては、国民の統治主体意識の醸成が必要であると表明し、国民主権と国民参加を明確に結び付けた上で、「当審議会は、このような認識の下に、訴訟手続きへの新たな参加制度について審議した結果、現段階において、以下のとおり合意するに至った。
 陪審・参審制度にも見られるように、広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、訴訟手続きにおいて裁判内容の決定に主体的、実質的に関与していくことは、司法をより身近で開かれたものとし、裁判内容に社会常識を反映させて、司法に対する信頼を確保するなどの見地からも、必要であると考える。
  今後、欧米諸国の陪審・参審制度をも参考にし、それぞれの制度に対して指摘されている種々の点を十分吟味した上、特定の国の制度にとらわれることなく、主として刑事訴訟事件の一定の事件を念頭に置き、我が国にふさわしいあるべき参加形態を検討する。」と述べている。

 当連合会はかねてより陪審制度の採用を主張してきたが、21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を審議している司法制度改革審議会においても、陪審制度等国民の司法参加の必要性について意見の一致をみたのである。ところで、今後、陪審制度が採用されることになると、速記官制度は極めて重要な役割をになうことになるのである。米国の陪審裁判で速記が果たしている役割をみると、陪審制度は速記なしには成り立ち得ないといっても過言ではない。

第四 陪審制度と速記官制度
 米国における陪審裁判ては、①陪審員の選定手続き、②裁判官の冒頭説示、③審理、④裁判官の最終説示、⑥評議、⑥評決という手続きが行われるが、速記官制度はこの手続きが適正に行われたことを確認する担保として、不可欠な制度である。
 陪審員の選定手続きにおいて、どんな人がどんな理由で排除され、どんな人がどんな理由を乗り越えて選定されたかという、事件について関係者が手続内で行った発言は、法廷内或いは裁判官室を問わず全て速記されるのが原則である。これは録音反訳では代替が困難である。また、陪審員が評議室に入って評議をする場合、評議の途中で、陪審員がある証言を再度確認したいと申し出ると、その部分についてキーワードを入れて、コンピューターから記録を取りだし、公開の法廷で当事者が立ち会って、速記官がその部分を朗読する。このように審理の直後に陪審員より質問があったり、あるいは証言を確認したいと申し出られた場合、録音反訳方式では間に合わないのである。

第五 まとめ
 現在、コンピューター活用の速記システム「はやとくん」やアメリカ製の日本語対応速記タイプ「ステンチュラ」等が実用化されてきており、速記したデータはその場でデジタル化され、ワープロで打ち直さないで文字化できるようになっている。これらが利用されると、陪審裁判の場合は、陪審員が評議の席で、必要に応じて直ちに証言調書等を手に入れることができるようになる。また、このような速記システムによって、調書が迅速に作成されると、裁判にかかる時間が短縮される。さらに、文字化されたものが画面上で読めると、聴覚障害者が裁判の当事者として、或いは陪審員として裁判に参加することも可能となる。
 このように、速記官制度は、記録の正確性・公正さを担保し、迅速な裁判等に資するものであるうえ、陪審制度にとっては不可欠なものである。当連合会は最高裁判所に対し、速記官の養成を速やかに再開されるよう要望する。
                              以 上
                              
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                            
                         日弁連総第54号
                       2001年1月17日
司法制度改革審議会
 会長 佐 藤 幸 治 殿
                   日本弁護士連合会
                     会長 久保井 一 匡

          速記官制度の検討を求める要望書

             要望の趣旨
 当連合会は、司法制度改革審議会に対し、裁判所の人的体制の充実の観点から、
速記官制度を検討されるよう要望する。

             要望の理由
同文

第一~第四 同文

第五 まとめ
 同文
 このように、速記官制度は、記録の正確性・公正さを担保し、迅速な裁判等に資
するものであるうえ、陪審制度にとっては不可欠なものである。当連合会は司法制
度改革審議会に対し、裁判所の人的体制の充実の観点から速記官制度を検討される
よう要望する。
                               以 上
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(参考)

第159回国会 法務委員会 第3号 平成十六年三月十二日(金曜日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/159/0004/15903120004003a.html

○佐々木(秀)委員 (前略)特に、さっきもお話しのように、裁判員制度が今度導入されるということになると、その関係でもリアルタイムの文字化というのがどんどん必要になってくるだろうと思うんですが、この音声認識技術の実用化の見通しについては、裁判所はどう考えているんですか。
○中山最高裁判所長官代理者 今委員から御紹介がありましたとおり、今、裁判所では、日本IBMと、音声認識技術をベースにこれを調書化する、しかも、その調書の裏には、その発話された音声というものがリンクされている、こういうものを共同開発中であります。
 現在、これは委員の方にもごらんいただきましたけれども、九割方の正確性であるということであります。これは六十個ぐらいの調書を読み込ませて、その上でのことでありますが、日本IBMによりますと、今後一万の調書を読み込ませることによって、例えば、刑事事件、民事事件でも医療過誤、行政訴訟、そういったそれぞれの分野で使える辞書というものが開発されていくことになり、相当精度は上がってくるということであります。
(後略)

○佐々木(秀)委員 (前略)今、音声認識技術がどのぐらいで実用化されるのだということについてはまだお答えがなかったと思いますけれども、それをあと何年ぐらいと見ているのかと、それができた場合には、一〇〇%大丈夫だという、まあ一〇〇%はないでしょうね、九十七、八%なんかになった場合には、今の録音反訳方式による調書の作成はなくなるのかどうなのか(後略)

○中山最高裁判所長官代理者 裁判員制度が何年ごろから実施されるかというところにもよりますけれども、それまでの間に実用化させたい、こういうふうに思っております。年限でいえば、三年ないし四年というふうに考えておるところであります。(中略)

 録音反訳につきましては、これはもともと、最初に平成九年に導入することを決めましたときから、過渡期のものである、こういう位置づけでやっておりました。したがって、音声認識が本格化してそれが使えるということになりますれば、それは消えていくということになろうかと思います。
(後略)

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