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1人リアルタイム「はやとくん」で文字通訳

速記者1人だけのリアルタイム「はやとくん」で,文字通訳にチャレンジしました。

「はやとくん」で情報保障を行うときは,速記と校正の2人組で行うのですが,今回は平日で人手がなかったのと,1人リアルタイムでも結構きれいに出ているので,小さいパソコンの画面に文字を表示するだけならと,思い切って1人でやらせてもらいました。

今回の依頼は、聴覚障害者の方が講師で,1日目に講演を2時間行い,2日目に質問コーナーの時間が30分あるということで,その質問コーナーの30分の情報保障をしてほしいということでした。

◎準備

聴覚障害者の方は,情報保障に慣れた方で,事前に講演に出てくる固有名詞をすべて抜き出した資料を事前に送ってくれました。

講演の前日に,私物のWindows Vistaのパソコンに,いつも「はやとくん」を使っている職場のパソコンの環境をそっくり移しました。
ところが,Vistaが難解な動作をするので,ここでとても苦労しました。

(参考 Vistaの困った点)

普通は,辞書や,はやとくんの自分の環境は,コピーで簡単に移せるのですが,Vistaは勝手にフォルダを作って保存して,そちらのものを使うのです。
例えば,「はやとくん」の環境を移すなら,C:\Program Files\Hayato\StenHlWに,Stenhlw.iniというファイルをコピーすればよいだけですが,Vistaでは勝手にC:\Users\****(ユーザー名)\AppData\Local\VirtualStore\Program Files\Hayato\StenHlWというフォルダができていて,そちらのStenhlw.iniを読み込んでくるのです。
辞書も同様で,勝手にフォルダを作ってそちらにコピーして,そちらのものを使っているようです。
辞書を書き換えると,C:\Users\****\AppData\Local\VirtualStore\Program Files\Aisoft\WXG\DICの辞書が書き換わりますが,元辞書のC:\Program Files\Aisoft\WXG\DICの中のファイルは書き換わらないので,分からず使っている人は混乱します。
はやとくんで作成された記録も,VirtualStoreのほうにできているので,探すのは困難で,普通の人は二度と見つけられないでしょう。

「はやとくん」を使っている方で新しいパソコンを買おうとしている方には,Vistaはお勧めしません。

機械の設定を終え,ステンチュラを職場から持ち帰り,なんとか準備はできたのでした。

◎1日目
翌日は聴覚障害者の方の講演の日で,ぶっつけ本番はVistaパソコンに不安もあったので,講演を聴きがてら練習をさせてもらうつもりでした。
ところが急遽,講師紹介の部分を情報保障してほしいという要望があり,一緒に聴覚障害者の方と壇上に上がり,いきなり本番となりました。

今回の文字通訳は,リアルタイム「はやとくん」の文字を拡大して表示するという方法で行いました。ステンチュラの組み立てと,パソコンを起動してケーブルをつなぐだけの簡単なセッティングだったので,5分ほどですぐ準備もできました。
講師紹介も,5分ぐらいの短い時間でしたが,リハーサルもできて速記の宣伝もしてくださって,ラッキーでした。

その後,1回目講演1時間,休憩1時間,2回目講演1時間を,講演を楽しみながら,練習もばっちりしたのでした。
会場の後ろのほうで速記をしていると,興味を持ってのぞきこんでくれる人もいて,これだと聴覚障害者とのコミュニケーションがスムーズにできますねと,感心してくれました。
手話は,助詞がない結構アバウトな言語なので,誤解することがよくあったり,専門的な用語を伝えるときに特に正確に伝えるのは難しいというようなことを言われていました。

◎2日目
いよいよ質問コーナーの日で,本番です。聴覚障害者の方と一緒に壇上に上がり,司会者の方の紹介から速記を始めました。
速記の宣伝もしっかりしてくださり,質疑応答の間に,参加者の方は自由に壇上に上がって文字通訳の様子を見てくださいと勧めてもくれました。
司会者の方の声に押されて,たくさんの人が見てくれました。

情報保障の経験はたくさんある私ですが,いつも校正役だったので,最初は速記をする手も震えて,緊張しました。音に集中して正確に打つのに精一杯で,表示される字のほうまで最初チェックしている余裕がありませんでした。

数分して,画面を見ると大体きれいに出ているようなのでちょっと安心して,質疑応答に入ると質問と答えの間に時間も少しできるので,チェックする余裕も出てきました。

誤ったものを追加して打ち直したり,発音が悪くて聞き取れないときは,括弧して聞き取れないと打ってみたり,質問者とそのそばの人の私語のような会話も括弧して打ってみました。

発言者の表示も,「>司会/>」,「>講師/>」,「>質問者/>」こんな感じで辞書登録しておくと,「>」で改行が必ず入ってくれるので,読みやすくてよいです。 

何より気持ちよいのが,校正者を入れてないので当然ですが,発言の数秒以内に全く遅れなく文字がパソコンの画面に表示でき,質問者が発言し終わると,すぐさま聴覚障害者の方が回答できるスムーズさがとてもよかったです。

ちなみに,1人リアルタイムで文字通訳の精度はどれぐらいだろうと,正解率を調べてみました。
間違っている字を拾い出し,句読点を除いた総字数で割ってみると,2.4%と出ました。
97%の正解率ぐらいでは出していたのかなと思います。

主な間違いは以下のとおりです。

高遠 → 講演
進行 → 信仰
終身 → 修身
新婦 → 神父
頂角 → 聴覚
深厚 → 信仰
空かし 赤し 明石 → あかし
ツー印絡 → 通院から
木の芽 → この目
託さん → たくさん
明示  → 明治
対象  → 大正
地下ころ→ 近頃
独身  → 読唇
有   → いう
感じ  → 漢字
威時示 → じいじ
意外  → 以外
し艶  → 支援
結核  → 欠格
古都  → こと
出ざびり帝都 出ざびり底出 出ざびり底図 出さブル座 出さぶるど → デサビリティ関係
余戸 → 用語
鉛 → なまり
開設 → 解説
マスカラ → ますから

あと人名の誤変換と,略語の打ち間違いが多少ありました。

緊張して略語を打てず誤変換したもの,日頃使わない語も誤変換が多いです。人名は、事前に辞書登録してなかったので、ほとんど誤変換しました。

あと、誤変換しやすい「古都」や「マスカラ」は辞書から単語を抜いているはずなのに,復活しているのはVistaの呪いか???

反省点としては,言い直しや言いよどみなどもっと整理して打てればよかった。画面をもっと見て,打ち間違いや,変換できてない言葉を言い換えて打ち直しができればよかった。言葉が早くなるとこまめに送る時間がなくなり二,三行まとめてどんと送ったところがあった,などです。

いろいろありましたが,聴覚障害者の方も喜んでくださり,私も大収穫の,うれしい1人リアルタイム「はやとくん」の文字通訳初挑戦となりました。

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コメント

たいへんお疲れ様でした。誤変換の表を見ると、
高遠 → 講演
頂角 → 聴覚
深厚 → 信仰 など何でこの字が出るの?というのもありますね。「あかし」はひらがなでいいのですが、漢字だと「証し」です。信仰上の体験談といったものです。
聴衆の方々のほとんどは情報保障というもの自体がはじめてでしょう。いきなり最先端の方法に出会って、地道な実践がおろそかにならないかとちょっと心配です。まず筆談からということを強調すべきだったかと。
情報保障の対象により事情はそれぞれです。不特定多数か、特定複数か、個人か。後になるほど訂正などせずにすっ飛ばすことが可能でしょう。フィードバックもある程度きくし。それとテーマが広いか狭いか。狭いと誤変換も見当がつきやすいです。上記の「威時示」は日常でその言葉を使っているかどうかでわかるわからないが別れるかも。文脈効果で、頻出しているし、何か崩れた日常語だなという見当もつくでしょうが。ユーザの語彙力も試されることになります。逆に語彙力ががかなりあるとわかっていれば、チェックはかなり省いてもOKと思います。情報保障の対象が個人のときに限りますが。
「デサビリティ」は「ディサビリティ」で、語のリストには横文字の場合使用する読み方も併記すべきですね。
「>質問者/>」ですが、質問者1というようにすればいいかもと思いますが、しばらくして同じ人が出てきても同番号にするのは大変だから、これは無理かも。

ともあれ、あらためてお疲れ様でした。

さっそくのコメント、ありがとうございます。
最先端の方法と言っていただきううれしい限りです。

「講演」は略語があり、「聴覚」も中戻り式の打ち方をすれば確実にこの「聴覚」の漢字が出ることが分かりましたので、今度からは正確に出せることと思います。

「威時示」は,「示威時」でした。
「じいじ、じいじ」と連呼されていたので、抜くときに間違ってしまいました。

「ディサビリティ」もご指摘のとおりで、「ィ」が要りますね。

「じいじ」と「ばあば」と「ディサビリティ」は、辞書登録にないので追加しなければ。

「質問者1」と数字を付けるというのは、最近「裁判員1」~「裁判員6」までの略語を作ったので、こちらの打ち方で、辞書だけ「質問者」に書き換えると対応できそうです。

発言者に番号を付けて打つ練習にもなってよいかもしれません。

有益なご指摘をたくさんしていただきありがとうございました。

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