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はやとくんフォーラム報告

S2 11月29,30日の「はやとくんフォーラム2008」では,今年も約60名に御参加いただき盛会でした。御参加の皆様,大変お疲れ様でした。

以下、御報告です。

★ オープニングは,朝日放送マンスリーABCのニュースのビデオから。

以前,ワードワープ社がプロ野球CS「阪神vs中日」に字幕 を付けたAbc1という話を紹介しましたが,それが関西のテレビ放送では初めて生放送に字幕を付けたということでニュースになりました。
字幕付けの舞台裏が紹介され,ステンチュラで高速入力する2人と校正者2人で,「はやとくん」で実際に字幕を付ける様子が放映されました。

★ 1番目の講師は遠藤会長で,「はやとくん」の新機能の紹介です。
・今年の大発明は,リアル速記録送信機能です。LAN回線を通して,複数人のパソコンに,日本語に文字化したデータをリアルタイムで送信することができます。
事前に,受信ソフト(ReceiveHayato.exe)を各自のパソコンにコピーしておく必要がありまPic_0003すが,インストールまでは必要なく,無料配布でだれでも使えるソフトです。
この受信ソフトにはメモ機能が付いていて,送信されてくる速記録が表示される画面の右側に,メモの画面があります。そこに,重要と思った発言にマークを入れたり,左側の速記録の画面から文字データをコピーしてきたり,文字 を打ち込んだり,自由に編集することができます。メモの画面はほかの人には見えませんし,メモを保存して持ち帰ることもできます。
裁判員はもちろん,弁護士,裁判官,検察官など,必要な人が必要に応じて利用することができるわけです。
Resibu2thumbnail2_2大事だと思ったところや,矛盾点と感じたところなど,マークさえしておけばメモ書きに追われることはありません。反対尋問や判決文の引用に利用したりなど,ユーザーの思うがままに利用が可能です。
すべての人に便利で優しい「はやとくん」の新機能ですが、世界のあちこちでは,既に同じ ような機能が実現していて,それが備えられた法廷はハイテク法廷と呼ばれています。

・リアル速記符号送信機能は,速記符号のままLAN回線で1台のパソコンに送信できる機能です。
例えば,法廷で速記すれば,執務室にいる速記官がリアルタイムで受け取って迅速に反訳作業を行うことができます。
午前中の法廷の速記録を午後の評議には欲しいというときなど,迅速な記録作りの秘密兵器として使いたい機能です。

・ほかにも,「はやとくん」の細やかな機能が進化していて,関西弁に対応する機能や,括弧で「て」が省ける略語を設定できる機能や,誤って打ってしまった改行符号を削除できる符号「*N A KH」が新設されたことなどが紹介されました。

★ 2番目の講師は布施速記官です。「評議に速記録を間に合わせる!あの手この手」と題して,裁判員裁判が始まって,速記録がすぐに欲しいというユーザーの声にこたえられるようにという勉強会です。

いつもの仕事を、準備段階から速記録完成まで順を追って,より早く正確な速記録を作成するためのコツがいっぱい披露されました。
勉強の後は模擬裁判で,事件用に略語を用意した場合と,全く用意しなかった場合とで,どのくらい変換率が異なるか,略語なしでどこまで打てるか,実験してみようということになりました。
内容は難解な医療事件における医師の証人尋問で,略語登録もして準備の完ぺきな講師と、略語なしのNさんで打ち比べが行われましたが,どちらもすばらしい打鍵技術で,医療過誤の事件に慣れているNさんも抜けることなく打ってしまいました。
その後,迅速に速記録に仕上げられて,会場で公表されました。

★ 3番目の講師は,聴覚障害者の田中邦夫氏です。「聴覚障害者のある人々と裁判員制度について」,日弁連の特別部会で行った講演のダイジェスト版のような形で御講演いただきました。以下、講演の要約です。

厚生省のデータでは,1年に聴覚障害者で裁判員になる数は69.4人,同じく裁判員候補者になる数は968.8人で,マイナーではあるがレアではない問題です。検察審査会でも,2000年に欠格条項が改正されてから,累計9人の聴覚障害者が審査員になり、そのうち筆記で情報保障したのは3人です。
6年分で8000人の審査員を決めるのに,聴覚障害者の数からいって,9人というのもいかにも少ない。手話が6人,筆記が3人というのも,実際に比べてアンバランスです。

情報保障について,手話は割とシステムができているが,要約筆記についてはばらばらなので,裁判員制度を通じてプラスになるように持っていきたい。
裁判員裁判では,閉ざされたシステムの中で,裁判員個人は6分の1ないしは9分の1の存在で,無視して評議が進行しかねない。きちんと情報保障のシステムを整えておくことが必要。
文字による情報保障を必要とする聴覚障害者は,手話を必要とする者より多いが,最高裁の認識や報道を見ると,手話を中心と考えているようだ。聴覚障害者の参加した模擬裁判の報道が時々あるが,みんな手話である。
最高裁見解と称して報道されているものでは,手話・要約筆記と併記されているが,最高裁が考えている要約筆記がどういうものか分からない。
自分が裁判所の行う裁判員ミニフォーラムに参加した経験では,事前にパソコン要約筆記か電子速記と言ってたのに,手書きの要約筆記にされてしまった。
手書きの要約筆記の場合,何か概念を説明するときに,かみ砕いた例を説明者が言うと,そのかみ砕いた辺りをスキップする例が多い。パソコン要約筆記でも,全体の6割ぐらいしか伝わらない。候補者を集めての選任の手続のときは,まだ要約でもいいと思うが,本番の裁判は全部伝わらないと駄目なのではないか。
弁護士会で話したとき,最後に要約でもいいかと聞いてみた。2人の弁護士が強硬な要約反対論を述べ,そこにいる十五,六人の弁護士で要約に賛成する人はいなかった。
したがって,最高裁が嫌でも,電子速記しかないのではないか。テレビやビデオの影響もあり,字を読む能力も大いに向上している。健聴者も,100パーセント正確に聞き取っているか疑問。専門語が出てきたら,その辺りのことは聞き逃すということは幾らでもあると思う。
裁判員制度では,入口で差別が発生しないか心配。候補者を選任する場合に,裁判官によっては,後の面倒を考えて善意で辞退しますかと持ちかけそうな気がする。
また,候補者へ文書が発送されたが,問合せ先がコールセンターの電話番号だけで,メールアドレスやファックス番号が付いていない場合,聴覚障害者の候補者は電話できなくて困るのでどうなのか知りたい。
欠格条項の反対の運動もやってきたが,裁判員のような新しい制度ができると,また配慮が忘れられていて,もぐらたたきという感じがする。
最近の報道で,地方では裁判員になるときに宿泊の必要があり,宿賃がかなり少ない額と聞いた。障害者は,バリアフリーで理解のあるホテルでなければならず選択の幅がない。また,聴覚障害者でも非常時に危ないということで,介護者が必要と言われる場合がある。介護者の分の旅費や宿泊費まで出るのか疑問だが,そういうことは聞こえてこない。

等々、最高裁にそのまま届けたいような、聴覚障害者から見た不安な点がたくさん出されました。

★ 最後に、次回の日弁連「人権擁護大会」開催地である和歌山の速記官2名が、全国の速記官に、参加の呼びかけとノウハウ伝授のお願いを行いました。

★ その後の懇親会と二次会は,日本速記協会の高柳理事長の御参加もあり,今年も大いに盛り上がりました。
中根さんが来ないと思っていたら、遅れていつもより多い賞品を抱えてやってきてくれて,大福引き大会となりました。
おめでたい話もたくさんあり,ハッピーな「はやとくんフォーラム」となりました。

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