聴覚障害者の9割は手話より字幕を望む?
2006年8月21日に総務省が行った
「国内外における視聴覚障害者向け放送に関する調査研究報告書」によると,http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/digi_hoso_sikakusyogai/pdf/061023_2p_1-12.pdf
聴覚障害者は,字幕番組をよく見ているようです。
「字幕番組のみ(手話番組は見ない)」「字幕番組の方が手話番組よりも見ることが多い」という回答を合計すると88%に達し、字幕番組の方が多く見られている。
字幕と手話のどちらを付与して欲しいかという点についても,あらゆる番組について8~9割で字幕を要望する割合が高いです。
要約付きと要約なしの字幕のどちらが望ましいかという質問では,どちらも3割と同じぐらいで,年齢,失聴年齢,障害の程度が上がると,要約を望む割合が高くなる傾向があるそうです。
そのような状況から裁判所における情報保障を考えてみると,最高裁が手話通訳で主に対応しようとしているのは,いかにもミスマッチな対応です。
基本的には字幕付けをすることで考えたほうが,多くの聴覚障害者に望ましい情報保障になると思われます。
裁判所速記官が要約なしの字幕付けを行うことを基本にして,要約を望む聴覚障害者には,質問者に簡潔で分かりやすい,ゆっくりした質問を心がけてもらえれば,かなりの高率で速記官だけで対応できることになります。
そのうえで,聴覚障害者の事情や,選任手続,公判,評議という状況に応じて,手話や要約筆記の併用を行うとするのが,皆一番満足という結果になるのではないでしょうか。
裁判所速記官が情報保障を行うと,手話通訳者や要約筆記者を手配する特別な費用が要らず,同時に記録も作成できます。
経済的にもとてもよいし,速記官の働きがいのためにも情報保障の道を開いてくれと最高裁にお願いしてきましたが,最高裁は手話通訳と要約筆記で足りるので,速記官が情報保障をする必要はないという回答をし続けてきました。
でも,このような報告書を見ると,足りるという最高裁の大前提が間違っているのではないかと思えます。
裁判員制度の準備のための模擬裁判も,情報保障は手話通訳で行われたのしか耳にしませんし,字幕は速記どころか要約筆記で付けたという話も聞きません。
最高裁は聴覚障害者=手話通訳と考えているようですが,しかし,総務省の調査では,聴覚障害者の約9割もが字幕希望です。
« 「はやとくん通信No.46」 | トップページ | 安原元家裁所長の講演録 »
「字幕付け」カテゴリの記事
- 神戸9条の会で字幕付け(2011.11.19)
- 国際ユニヴァーサルデザイン会議in浜松で字幕付け(2010.11.06)
- 聴覚障害者の9割は手話より字幕を望む?(2009.11.16)
- 1人リアルタイム「はやとくん」で文字通訳(2008.10.18)
- NHK ろうを生きる難聴を生きる(2008.10.17)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。


障害学会というのがありますが、ここでも聴覚障害者と言えばまず手話です。さすがに手話で十分とは考えていないので、発表は要約筆記をきちんとつけています。しかしポスター発表といういわば即席発表のためには、手話通訳を巡回させるなどというので、申し入れて筆談にも備えさせました。ただ研究対象としているのあはもっぱら手話です。厚労省の統計では主なるコミュニケーション手段が手話というのは2割ですが、テレビの場合手話がつくのはNHK教育の一部を除けば教養・広報番組だけなので、総務省の統計の場合はそれも考えねばなりません。ドラマなどを手話ではやってないのですから。
裁判員裁判についてはおっしゃるとおりです。ただ前記の2割は手話がいわば母語ですから、字幕では必ずしも代替できません。それに発語の問題もあり、「読み取り通訳」として手話通訳が手話を音声言語にする必要もあります。要するに必要に応じて手話と筆記のどちらも使える体制を整えろ、ということです。
投稿: jsds001 | 2009年11月17日 (火) 21時36分
jsds001さま
さっそくのコメントありがとうございます。
9割は言い過ぎで,2割は手話が母語ということですね。
また,「読み取り通訳」の指摘もありがとうございます。
裁判所は,手話通訳の受け入れ態勢の整備に一番力を入れているようですが,それさえ「読み取り通訳」のことまでは考えてないと思います。
11月16日付け朝日新聞(徳島)に「バリアフリー道半ば」という記事のとおり本当にまだまだですね。
http://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000000911160005
投稿: Kimi | 2009年11月18日 (水) 22時38分
皆さん、今日は。お久しぶりです。9年前に速記官を卒業した三太郎です。今、要約筆記講習会に通っています。
私も聴覚障害者の情報保障は手話と思っていましたが、手話を理解できるのは15%程度で、それは生まれつき障害を持っている人。ところが、中途で難聴・失聴になった人は、まずは補聴器になり、次第に文字情報に頼るようになるとのことでした。
その文字情報も、どの程度漢字かなまじりにするのがいいか、いろいろだそうです。例えば力士の名前は、彼らは英字新聞で読みを知るそうです。「日馬富士」と書いて「はるまふじ」というのは健聴者は文字と音で理解しているからと言われて、なるほどと思いました。北海道の地名も難しいそうです。
このところ毎週聴覚障害者の話を聞いていて、びっくりすることばかりです。
投稿: 三太郎 | 2010年9月20日 (月) 10時05分
三太郎さん,お久しぶりです。
要約筆記講習会に通っておられるとは,お元気そうで何よりです。
講習会のびっくり話のおすそわけ,ありがとうございます。
私も最近,同僚と情報保障の辞書作りをしながら,山人会は「さんじんかい」か「やまびとかい」か,インターネットのHPに,読み方を載せるか英語のページを作ってほしいとぶつぶつ言ってたところでした。
またおもしろい話があればお聞かせくださいね。
投稿: Kimi | 2010年9月22日 (水) 00時36分